もう「聞け!」とは言わせない。JAIA輸入車試乗会でアウディQ7のBang&Olfusenに酔いしれる

アウディとはラテン語で「聞け!」という意味なのだそうです。そもそも前身の「ホルヒ」それ自体は創業者アウグスト・ホルヒに由来するものの、「聞く」を意味するドイツ語「horchen」に音が近かったことから、これをラテン語で言ったことが始まりなんだとか。

確かに、あからさまにクルマに関する状態を表したりするより、プレミアムカーのブランドとしては「耳を澄ます」「響きあう」「ささやきを聞いてほしい」なにか音をフックに共鳴しあうような価値観はふさわしいように思えてきますね。しかし、もうクルマが「聞け」と言わなくとも、つい耳を澄ませてしまう。最新のアウディとはそういうものなのかもしれない。そんな風に感じたのです。

今月、毎年日本自動車輸入組合(JAIA)が大磯で開催しているメディア向けの合同試乗会。筆者も呼んでいただき、日ごろから興味のあるクルマ、乗る機会に恵まれなかった車などをいろいろと試乗させていただくことができました。

やはりクルマは乗ってみないとわからないこと。乗ればわかること。結構あるものです。このときにご縁があって乗ることができたアウディQ7も、乗っておいてよかった、と思える一台でした。

グレードはV6 3.0リットルエンジンを搭載した「3.0 TFSI quattro」上級グレードのモデルです。官能的とは言えないかもしれませんが、十分に豊かなトルク館は常に感じることができ、かなり大柄なボディのこのクルマに身軽さを感じることができるようなエンジンでした。

大ぶりなシート、や、ゆったりとした室内。特殊かつ個別の条件での制約がなければ、やはり何事も大きいに越したことはない。それがクルマの真理のような気がしたものでした。

なぜそう感じたかというとこのクルマ自体、全長5メートル超、幅2メートル弱、重さも2トンオーバーながらその大きさを感じさせなかったからです。荷物もたっぷり詰めて、人もゆったり乗れる。そしてこのクラスのクルマでもカタログ上1リットル当たり12キロメートル弱走る燃費を誇っています。絶対的なエコカーとは別ですが、これはこれでやはりエコ。そう感じないではいられませんでした。

燃費をスポイルしない十分なパワーを誇るエンジンがこのクルマにはあっていると思いました。アウディの方曰く、2.0を積んだモデルもあるそうで、そちらも必要にして十分なパワーは発揮するとは言うものの、やはり余裕が違うとのこと。

このクラスにとって、もしかすると「必要にして十分」という評価自体が不十分なのかもしれませんね。

何よりダイナミックな加速が静かなのですから。今やこのクルマの躯体自体はベントレーベンティガやポルシェカイエンなど、名だたるプレミアムSUVのベースにもなっています。しかしそんな中に遭ってこのV6の、豊かながらこざっぱりしたライド感がカジュアルさもあって好感触です。

こういうクルマですので、やはりプレミアムオーディオにも耳が行きます。キーを受け取り、まもなくいつも聞いているインターネットラジオをつなぎ込みました。よく聞いているのはハンガリーのオペラ専門ラジオ。演目がなかなかいいのと、時折ハンガリー語でしょうか、珍しい音源が掛かることもありそのあたりも興味深いものです。

試乗したクルマにはBang&Olufsenの3Dアドバンスサウンドシステムというオプションのオーディオが装着されていました。多数のスピーカーもさることながらそれぞれのシートポジション、乗員の座る位置ごとに位相が計測されていて、例えば映画を見たとしても、それぞれの席で別々の聞こえ方になるのと同時に、より臨場感の溢れるサウンドが楽しめるセッティングになっているのです。

私の場合は運転席で運転しながら聞くというだけでしたが、それでも、管楽器、弦楽器、声楽パートなど、それぞれに音の表現力がより精緻で際立つようでした。表現力の豊かさという点でも、出色の出来栄えであると感じたのです。

もちろんオーディオ好きの方でより細部にまでこだわりたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、かなり贅沢な音を楽しめるプレミアムサウンドシステムが、容易にディーラーでのオプショナルチョイスで選べることは、ユーザーの体験できるプレミアムのベースや平均値が上がることにほかなりません。

もしQ7を選ぶなら、これは是非とも装着したいオプションではないか。そんな風に感じました。

ワーグナーの楽劇の説明の時ばかり「ライトモティーフ」の話が出たりしますが、他の作曲家の作品でも、和音や、旋律などで、場面を予告し、運命の導く先を案ずるような音楽表現は、実は存在します。そしてそういう箇所の表現が上手い演奏に触れた時に、音楽ファンはうれしくなり、膝を叩き、時に狂喜乱舞するのでは二でしょうか。Q7のBang&Olufsenはそうした箇所の表現力も非常に高いレベルにあると感じました。

冬の細い日差しを浴びながら西湘バイパスを試乗していたときに、ドリーヴの「ラクメ」の花の二重唱が流れてきたものだから、返却前にもう一回りしてしまったほどです。そのほか、試乗時間の間中名演奏を堪能してしまいました。愛おしい響き、もはや「聞け」と言われるまでもなく、耳を澄ましたくなる音も、アウディQ7は望めば選べるのです。もう少し聴いていたいと思わせる音に触れ、Q7も乗っておいてよかったと思える一台です。

(中込健太郎)

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